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読書感想文・企業が「帝国化」する(2013年3月分)

題名:企業が「帝国化」する

著者:松井博

 著者は元アップル社シニアマネージャー。ということですが、話題がアップルに偏ることなく、マクドナルド、エクソンモービル、グーグルといった世界を牛耳る超巨大企業がどのような動きをしているのか、そして今後どうなっていくのか?分析しています。マクドナルドの食肉の話などはちょっと気持ち悪くなる部分もありますが、だからこそ、そういったところから目を背けず、自衛する姿勢が大切なのだと思います。

 なお大前提として、著者は『世の中は「仕組み」を創る少数の人々、「仕組み」の中で使われる大半の低賃金労働者、そして「仕組み」の中で消費を強いられる消費者という3つの側面からなっている。』としています。

 その上で、特に印象に残った点は2つです。そもそも仕組みを作る側と使われる側を考える以前に、『仕組みを作る側は何を使って仕組みを作っているのか?』という視点です。なぜ今になって、仕組みを作る側は少数で、その他は使われるということになっているのか?この答えは『ITを中心とした技術革新』と、『教育コストが下がったことにより高度な教育を受けた外国人』であり、これらが仕組みの歯車となり、日本人の雇用を奪っていくのではないでしょうか?ここを押さえておくことが実は、仕組みを作る側か、使われる側か、を考えるよりも重要なことだと思っています。なぜなら、今は某企業の下請けかもしれないけれど、(いわば使われる側)ITにも外国人にも代替え出来ないスキルを持っている。そのような状態であれば、その企業から見放されても他で十分に稼いでいくことができる。という考え方もできるからです。仕組みを作る側、使われる側という話になると、じゃぁどうやって作る側に回るか?という話になりがちで、それも間違えではないと思いますが、それよりもなぜそうなっているのかを考える必要がありそうです。

 もう一点興味深かったのが、本社で要求される能力を一言で言い表すとしたら「仕組みを創る能力」であり、そしてそのためには想像力が必要だということ。それはそうだろうと思ったのですが、本書を読むまでは、想像力、いわばクリエイティビティを必要とされるのは、マーケティング担当者だったり、営業担当者だったりというイメージを持っていました。でも、そうではないということです。世界を相手にする、世界スケールで仕事をするということは、『ありとあらゆる職種で仕組みを作る想像力が必要になる』ということなのだそうです。(本書ではアップルが世界中に短期間で商品を組み立て、納品するその仕組みを例として取り上げています。)管理部門だから、いわれたことだけ、決められたことだけ、やっていればいいということではないのです。このように考えると、大変な時代になったと思う反面、どんな仕事であっても攻めの姿勢でいけ!ということであり、そのことは大変、仕事に対して意欲を持って活動できるというポジティブな話だ思います。

 仕組みを作る側、使われる側にこだわることなく、想像力を持って仕事に取り組もう!という気持ちが、大事なのだと思います。大企業に入りたいとか、興味ないとか、そのようなことは度外視しても、今後の働き方を考える上で、とても参考になる一冊です。